講師:味岡伸太郎さん [http://www.ajioka3.com]
聴き手:白井敬尚さん
我々は、漢字、平仮名、片仮名、ときにはアルファベット、数字と、構成要素も画数も違う文字を使用して日本語を表記する。中国から漢字の渡来以来、約1500年をかけて、日本人は漢字仮名交じり文を創りだし磨いてきた。この漢字仮名交じり文は、それぞれの文字の性格の違いによって成り立っている。ならば、その伝統にならったタイプフェイスはどうあるべきか。
1984年に発表した仮名書体「小町・良寛」以来、その課題の追求と実践の中から、必然的に派生したタイプフェイスとタイポグラフィを通して、文字の魅力と可能性が見えてくるだろう。
しかし、タイプフェイスとタイポグラフィは目的ではない。人には表現したいことや、成すべきことがある。そのために、タイプフェイスやタイポグラフィが必要になるときがある。私の、ツールとしてのタイプフェイスとタイポグラフィ誕生の地平も、そこから見えてくるだろう。
そのとき初めて、タイプフェイスとタイポグラフィは目的にもなり得ることに気づくだろう。
●味岡伸太郎(あじおかしんたろう)
1949年、豊橋市生まれ。「美術に係わることでデザインが大衆に迎合せず。デザインに係わることで美術が社会との接点を見失わずにすむ。美術とデザインが造る山の稜線上を歩け。」画家・山口長男の言葉が活動の基準。1984年、かな書体「小町・良寛」をデザイン。自作のタイプフェイス及び関係した書体で、全てのグラフィックデザインを制作。2018年、見出し明朝体「味明」2種と仮名10種を制作。これまでに漢字と仮名書体合わせて約150書体を発表。2001年、郷土の記録を残すため、出版社「春夏秋冬叢書」設立。並行して、国内外のギャラリー、美術館で現代美術作品を発表。2016あいちトリエンナーレ出品。